私の二人の神様へ








 仁くんは耳の裏を掻いて、ため息を吐いた。


 その仕草に、私はびくりとする。


 彼を呆れさせたのではないかと。



「まだ付き合ってないよな?」



「う、うん」



 私が、ドキマキしながら答えると、良かった、と短く息を吐いた。



「安易に答えを出すな。良く考えろ、小春。そもそも、男として俺はあいつが気に食わない」



「どういうこと?」



 彼は私以上に私を知っている。


 この整理のつかない私の心をどうにかするヒントをくれる。



「傷心の女を口説くなんて、セコいマネをできる神経が俺には理解できない」



 そういえば、榊田君もそんなことを言っていたような気がする。


 けど、



「だからって、それで好きになるわけじゃないでしょ?」



 仁くんは、首を横に振った。



「榊田のこと支えにしてるだろ?傷心の時が一番付け込みやすいからな。優しくされて心が傾かないわけがない。だから卑怯なんだ」



 彼の言葉を否定できない。


 確かに、拠りどころをなくした私が自分を保つために、榊田君を支えにしている。


 仁くんに受け入れてもらえなかった私を榊田君は好きだと言ってくれるから、私は今でもコツコツと一歩一歩歩むことをやめていない。



「それに、あいつの顔が芸術品なのは俺も認めるところだ。あくまで褒められるのは顔だけだが。あんなのに熱心に口説かれたら、満更じゃないだろ?」



 これも否定できない。


 榊田君みたいな男の子が私を好きだと言ってくれることは、私の虚栄心を満たしてくれる。


 みんなに羨ましげに見られると、気分が高揚している自覚はある。








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