私の二人の神様へ





「俺に、諸手を挙げて飛び跳ねろとでも言うのか?お前じゃあるまいし」



 くだらない、と言いながら野菜スープをすする。



「飛び跳ねなくても、仁くんみたいな笑顔を見せるべきだわ」



 途端に、彼の端整な顔がひどく歪む。



「あいつの笑顔をマネる?それを俺がやったらどう思う?」



 想像しそうになって、慌てて首を横に振って追い払った。



「……榊田君はそのままで十分素敵です。無理はしないでください」



 下手な想像は身体に毒だ。


 彼は満足げに頷いた。


 顔はまったくいつも通りで、満足げにはまったく見えないけど。















 榊田君とは大学入学当初からの友人だ。


 私が、今もっとも長い時間を過ごしているのは、間違いなく彼。


 こうして、毎日とは言わないが一緒にご飯を食べているのだから。


 彼は私のことが好きらしい。


 らしい、というか、断定するべきか。


 彼は私のことが好きだ。


 だが、私といる時でも仏頂面、良く言えばクール。


 それに、そっけない態度だし、私のことを辛辣に言うから、私のことが本当に好きなのかと疑いたくもなる。


 それでも疑う余地がないのは、彼が私には特別にとびっきり優しいし、私を甘えさせてくれるからだ。


 本当に大事にしてくれる。


 私の傷ついた心を癒してくれる。




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