私の二人の神様へ



 私は今回も明美さんには会えず終わった。


 榊田君が全力で拒否した節があるけど。


 とにかく、仲良く三人で実家に戻った。


 そして、私も同日、実家に戻った。


 仁くんと佳苗さんと一緒に。


 佳苗さんの出産予定日は年が明けた一月の末日。


 もう一ヶ月で、生まれてくるのだ。


 さらにおなかは大きくなっていて、佳苗さんが歩いていると、よいしょ、よいしょ、と聞こえてくるみたいだ。


 おなかの大きい私の手を、仁くんが引いてくれる。


 そんなことを夢見てた。


 でも、現実には私ではなくて、佳苗さんで。


 私に遠慮してか、仁くんが彼女の手を引くこともなかった。


 二人の間には、安定した穏やかな空気が流れていて本当にお似合いで、少しだけ胸が痛んだ。
















 実家では、お父さんとお母さんは私でも仁くんでもなく、佳苗さんを心待ちにするかのような歓迎振りだ。


 私が拗ねて見せると、お父さんはあわあわして、取り繕うように私が帰ってきたことを喜んでいたけど。


 それも仕方がない。


 なんせ、二人にとって初孫のようなものだから。


 仁くんの家には我が家から私が使っていたベビーベッドが送られていた。


 こんな二十年も前の物を送る両親に呆れ返り、仁くんと佳苗さんに謝ったら、



「私たちが頼んだんですよ。小春さんみたいな子に育てば良いな~って」



 そんなことを言われて、恥ずかしくなった。


 私はそんな大層な人間じゃない。


 二人の血を半分ずつ綺麗に受け継ぐほうがずっと素敵な人に育つ。


 それでも、嬉しかった。


 せめて、この子の前では素敵なお姉さんを演じられたら良いと思った。





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