私の二人の神様へ
「な、なんて薄情なの!?私の代わりに料理だべて来いなんて、言っでないぃ~」
「あら?俊君に看病して欲しかったの?」
お母さんが、からかい混じりの視線を向けて来たから、布団で顔を隠す。
「まざか。薄情だから、憎らしいだげ。仁ぐんは絶対、メールをぐれてるわ」
ベッドの脇に置いてある、携帯を見れば、やっぱり仁くんからのメール。
ぜぇぜぇ、と熱い息を吐きながらも、へらへら笑ってしまう。
「仮にも私の娘なんだから、そんな気持ち悪い顔しないでくれる?」
何とでも言えば良い。
仁くんは、今日も私のために高級なオレンジジュースを買ってくれていたようだ。
「オレンジジュース頂戴。仁くんががっでくれだのね」
「まったく。仁君も相変わらずね。私が飲もうとしたら慌てて取り上げるのよ!?『小春のためでおばさんのためじゃない』って!」
お母さんは鼻息荒く怒っているけど、これは昔から変わらない仁くんの習慣。
彼はいつも私に封を切った最初の一杯をくれた。
彼のそんな特別扱いが嬉しくて、最初の一杯が特別おいしく感じる。
「ありがとう」
インフルエンザから三日で回復を遂げ、一日安静にし、五日目。
お母さんは実家に帰り、その日の夕方、榊田君が顔を出した。
「仁の悔しそうな顔を見たせいか、ここ数日夢見が良い」
冗談ともつかないことを榊田君は言う。
「で、どうだった?赤ちゃん?」
きっと、可愛く天使のようなのだろう。
早く会って、名前を呼びたい。
その私の空想を榊田君が見事にぶち壊す。
「猿かと思った」
「…………」
本当にデリカシーがない榊田君。
私は寛大に笑って見せた。
「みんな最初はそうよ。榊田君も」
「それがわかってるなら感想なんて聞くなよ」
あはは。
口元が引きつりながらも笑顔を張り付かせる。