私の二人の神様へ
「……間違いその十四。クールノー・モデルとシュタッケルベルグ・モデルを間違えるとはどういう了見だ」
榊田君は、冷たい目と冷たい口調で私を見た。
過去問を解き始めて一週間、点数が如実に出ると榊田君のスパルタは増した。
「だって、似てるじゃない?そんなに怒らなくても」
「問題文をしっかり読めばこんなミスはしない。こういう出来る問題で落とすな」
彼は、頭をがしがし掻いた。
これは、私の点数が伸び悩んでいるから困っているようだ。
「お前、これで明日、仁の家に行くのかよ?」
これは行くな、と言っているようだ。
すかさず、反論する。
「別に一日ぐらい平気でしょ!?夕方には戻って勉強するし!」
「一日で済めばな。精神的なショックを受けて今死人になれば確実にお前は就職浪人だ」
「精神的ショックって何もないわよ。励みにはなっても」
少しうろたえながらも虚勢を張ると、榊田君はあざ笑うように鼻を鳴らした。
「へぇ~。結婚式の時みたいによだれに鼻水垂らして泣く姿が予想されるけどな」
た、確かにそんな風に大泣きしていた。
榊田君にそれを見られるとは一生に不覚。
「そんなことしない。嬉しいもの。絶対に行くから」
そうだ、嬉しくて泣くことがあってもショックなんか受けたりしない。
それなのに、声が萎んでしまう。
心のどこかで、行くのをやめようかと思ってしまう。