浅葱色の忍
慶喜襲撃の情報があったが
天子様に呼ばれ、御所に
どうしてもいかなければならないらしい



恵は、普通の娘として梅沢のそばにいた




新選組も到着し、出発間もなく
情報通りに襲撃された


俺の役目は、襲撃してきた奴らを
包囲し、ひとり残らず捕まえること


慶喜のもとを離れ、数年
それでも、仕事の勘や空気で
不思議と連携がとれ、役目を終えた


ただ、慶喜や新選組のそばに戻った時



慶喜の腕の中で、恵が苦しんでいた
肩から腹まで、ザックリと斬られた傷


助からない

助けてやれない


一瞬で、状況を把握した





恵が、懐からクナイを出し
慶喜に微笑む


「烝… 助けてくれ… 恵を…」




俺は、首を横に数回振った



「俺には、出来ぬ!烝…」


「なら、俺がやる」



歩み寄る俺に、慶喜が首を振る



「お前にそんなことさせられない」


「恵 いいか?」



恵が、俺に差し出したクナイを受け取り



グサッ



「す…烝… お… きに」




クタリと恵の体から、力が抜けた

慶喜に仕えている忍が集まり

俺が膝をつくと

皆も、膝をついた





「ありがとうございました」








主を守ってくれた恵に御礼を言うと
忍は、影に消えて行った



俺は、立ち上がり



「梅沢 恵を連れて行け」





慶喜を輿に戻す為、腕を掴む


「なぜだ… なんで忍に戻ったりしたんだ!
恵を… 恵が死んだのに…
悲しみも見せられないような
そんなの…」


「……」


そんなの? 忍なんだから
任務中に泣かないのは、当たり前


俺は、子供を亡くしても

悲しみに耐えるため、働いた

慶喜の前で泣いちゃいけないと思った


忍として生まれ、忍として生きてきた


冷たい人間だと言いたいんだろう



だが、主に死なれたら…



忍は、居場所を失う



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