浅葱色の忍
薫と恵が、御所の忍になった


主は、皇太子になったばかり
後の孝明天皇


俺が、10歳の時だった






里に置いてけぼりになった俺は






「トドメを…」





敵にやられた仲間

仲間というか…

近所のおっちゃんに頼まれて

トドメをさした




「烝!!あんた!!なんてこと!!」



おっちゃんは、残りわずかな力を振り絞り
ここまで帰り、トドメをお願いした

それが、俺だった

人を呼びに行く余裕はなかった



「おっちゃん!ご苦労さまでした!」




おっちゃんの家族からは、感謝された

でも……



「いずれ、嫁にいって
その手で、子を抱くんやで!?」


「俺、忍やさかい嫁にいかへん」


「烝…俺って言うのやめ!」


「ええやん
俺が俺って言うて、誰か困るかいな?」


「ホンマに跳ね返りやな!」


「やかましなぁ…」











15になると、同じ年頃の男の子は
里にひとりもいなくなった





「烝は、頭がええ!それに、優秀や!
くノ一では、勿体ない!」



やかましいおかんと違い

おとんは、俺に甘かった

おっちゃんにトドメをさした時も

俺は、何も事情を言わなかったけど



「良い目をしてんねん!
命が見えてんねん!
アイツの名誉を守ったんや!
偉いな!烝は、優秀や!」



おとんが、鼻息を荒くする度に
おかんが、鬼のような顔をしてた




「烝を外に出す!」




おとんが言った時


おかんは、泣いた



初めて見るおかんの涙やった





「烝、体に気をつけて
たまにでええ、文を頂戴な?
あと…… いつでも帰っておいで?」




「うん」






くノ一として、どこぞの女中になるわけでなく、きちんと主に仕える忍になれる



嬉しかった

























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