浅葱色の忍
病床にある家慶様に
お目通りが許された


「お役にたてず、申し訳ありません」

「何を申すか… 
謝るのは、私の方だ
家臣のひとりが酷く怒鳴ったそうだな
阿部正弘、わかるか?」

「はい」


「あやつは、其方をそばに置くべきだと
必死に訴えてきた
しかし…
私には、あまり時が残されておらぬ」



「殿 連れて参りました」




阿部に連れてこられたのは


慶喜だった



「一橋慶喜だ 此奴がどうしても其方を
譲って欲しいと言うのだ
側室として、慶喜のそばにいてくれないか」


「俺は、忍だ」


「忍としてなら来てくれるのか?」



慶喜が、俺の隣に座った


5年ぶりの再会



「お前、あの時のガキだろ?」


「覚えてくれていたのか!?ショウ!」




おとんが外で俺を呼ぶ呼び方で
ニコリと笑った





屈託のない、幼い笑顔に
ドキッ と、胸が鳴る







「俺の… 主になってくれるのか?」






「ああ!もちろんだ!!」












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