浅葱色の忍






慶喜の部屋に入ると

入り口に座った



「どうした?こいよ」


いつも通りにこりと手招きする慶喜


「今日は、側室として来た
正直に言うと…
吐き気がするほど怖い…
なるべく… 優しくしてほしい」


慶喜は、俺のそばまで来て
そっと抱きしめてくれた


恐ろしいほど胸が鳴り
外に響き渡っていないかと
心配になるほどだった


「無理にすることはないと言っただろう?」



俺に何の想いもないだろうけど



「慶喜……」



そっと、慶喜の背中に手を回した


涙が頰を伝うのがわかった


初めて、男の人に抱きしめられている
これが、偽りの夫婦だとしても
慶喜を想う気持ちが確かに俺にある


それだけでいいと思えた



「抱いてもらえると助かるんだ
慶喜なら、優しくしてくれるだろ?」



女から誘うって、どうなんだ?

つーか、無言はないで!?



「俺も経験がないんだ
その… 優しくというのがわからぬ」



そうだった
その練習相手なんだった


ゴソゴソと涙を拭いて


膝立ちをした




「なんでもいいよ
慶喜が相手なら、痛くても
なんでも我慢する」









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