浅葱色の忍
なりたかった忍なのに


裏切り者の暗殺が主な仕事になり
常に人を疑って見なくてはならなくて


次第に人を信じることの難しさに悩み



人と話すことが億劫になった





月命日には、墓に行き
ため息をつくようになった





そんな俺をさらに悩ませたのは






家定様が亡くなり、次期将軍を誰にするか






ここで、慶喜と家茂の名前があがった


阿部は、慶喜を推してくれた




だが、慶喜にその気はなく




結果… 隠居をすることになったからだ





「アホや…」




将軍になれるのに、ならんやなんて!!!




「慶喜様らしいじゃねぇか!!」




暇になってしまったので

墓に平岡がついてくるようになった




「なぁ… 聞きにくかったんだけど…」


「なに?」


「御子の名前… まさかっないわけじゃ!」


「あるわ!…そうだな
平岡は、一緒に送ってくれたし
いっかな…
慶喜にも教えてないけど…」


「は? 慶喜様が知らないなら、いい!!
先に知るなど、恐れ多い!」


「喜代」


「わぁーー!!聞いちまった!!!」


今更、耳を抑えて慌てている
平岡に笑ってしまう



「良い名前だろ?
勝手に慶喜の字を使った!へへっ」


「良い名前だ」




平岡が俺の頭を撫でた



「やっと笑った」


と、笑顔を見せて




……時々、優しくなる平岡



「キショいねん!!やめや!!」


「ぬあっ!てめぇ!!
その言葉遣い辞めろって!!」


「やかまし!!」


「こら!!烝!!コノヤロ!
俺の教育が悪いと思われるだろうが!!!」




さり気なく、俺の名を呼んでくれた


事あるごと、何かにつけ拳骨を貰う
冷たくもある言葉の中に
いつも、俺を思う気持ちが見えた





だから、平岡を憎いと思ったことがない















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