浅葱色の忍

慶喜の後悔

「ごめん…」

そう呟いて離された手


「俺は…忍だから」




申し訳ないと思っているのか顔を歪ませた



「烝 側室に戻って欲しい
少し考えてみてくれ」



数日後




烝が笑わなくなった





そんなに忍の仕事が辛いのだろうか




だったら…




戻ってくればいい







「側室に戻れ」


「俺は、忍だ」


「前も、仕事と思っていたのなら
また忍として、側室になればいい」


「……」



烝は、無言で俺を見つめ続けた




それから、プイッと顔を背け

部屋を出て行った





しばらくすると






梅沢に続いて、平岡が入ってきた



「アイツ泣いてましたけど…
何かあったんですか?」




平岡の言葉に、驚いた



「泣いていただと!?」



「ええ、心配して声を掛けましたら
とても睨まれて…
屋敷を出て行きました」


「出て行ったって、どこに!?」


「さぁ… 夜には、戻るでしょう
俺、話してみます」


「ああ、烝の事は、平岡に任せた」















泣いていた理由

屋敷を出てどこに行ったのか





夜に戻った烝は、何も言わなかった





「アイツ… 本当、肝心なことは言わないし
何考えてんのか…」



平岡は、唇を噛み締めていた




「平岡が頼りだ すまんな」









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