浅葱色の忍
翌日



美賀子がやって来て


「慶喜様 烝を側室に戻したいというのは
本当ですか?」


「ああ」


「勝手だと思います!」


「は?」



美賀子が怒っている
そう、思った



「慶喜様の都合で、振り回される
烝の身にもなって下さい!
私は、正室として不自由ありません!
しかし、烝は……
烝は、どれ程の我慢をしてきたか!
慶喜様は、女心をちっともわかろうとしない!烝が、可哀想です!!」



怒っていることに間違いないが
烝の代わりに怒っているようだ



「美賀子 正室より、側室を大切にするわけにはいかぬ わかるだろう」


「慶喜様!!私が、側室になります!
烝を正室にして下さい!」


「無茶な…」


「無茶を仰っているのは、慶喜様です!!
烝が辛い時、何もしないでいるのに
ご自身の寂しさで烝をそばに置こうとする
同じ辛い経験をまたさせるのですか?
泣いてたそうじゃないですか…
どうして平岡に任せるのですか?
慶喜様が側室に欲しいと願うなら
慶喜様が口説くべきでしょう!?」


「立場というものがあるだろう」



「私なら、好いた女子の手は離しません
心配する気持ちや、側室にしたいと思うなら、行動で示すべきです!」


「それが出来ぬから、平岡に任せた」


「私には、して下さいました」


「其方は、正室だ!」


「好いておらぬ正室でしょう?
慶喜様は、烝を好いているのでしょう?」



「美賀子…」



「私は、慶喜様をお慕いしております
だから、慶喜様のお気持ちはわかります
だけど…烝の気持ちもわかるのです
慶喜様、このままでは烝の心が離れてしまいます!どうか
ただ、烝をそばに欲しいのだと
お気持ちを伝えて下さい!」








美賀子がなぜ、こんなに懸命に訴えるのか















俺が、もう少し烝への気遣いが出来れば
















失わずにすんだものを……














< 253 / 264 >

この作品をシェア

pagetop