浅葱色の忍
屋敷に戻ると平岡が

「馬鹿野郎!!!
勝手に出掛けるな!!!
…っ 心配したんだからなっ!!!」


平岡の目には、うっすらと涙が見えた



「ごめん…」



「また、松とかいう奴と会ってたのか?
もしかして…
お前は、松を…」


「平岡 松五郎だ 松じゃない
俺の友は、松五郎という名だ」


「烝…」


ちゃんと笑えているだろうか


「平岡! 俺…辞める!
忍… 辞める!」


「忍って… お前… もう辞めてんだろう」


「は? 忍として側室になってるんだろ?」


「烝…お前…それは…」


「ここを出て行く」


「なんでだよ!!」


「このまま…ここに居たら
死にたくなるんだ
俺は、何一つ成せてない
ここを出て、自分に出来る事をさがす!」


「俺は、いつも説教ばかりしてたけど
お前の事、認めてたからだぞ!?
お前が、働きすぎるから
優秀すぎて、何でも1人でやるから
俺は… 心配で…
だって、お前は
俺の妹だと思ってきたから…
行くな! 行かないでくれよ!」



「妹…か… ありがとう
そんな大切に思ってくれてたんだ?
めっちゃ嬉しい!ホンマおおきに!」



「言葉…気をつけろって…」



「平岡の前だけやで
この喋り方、平岡の前でしかしてへん
平岡がホンマのお兄やって思っておく!
そんで、いつか…
親にでけへんかった孝行するさかい!」


ゴンッ



「イッタァ!」


久しぶりの拳骨は、強烈だった


「親にしてやれ!バカ!!」


「もうおらんねん
2人とも、死んだやって…」




平岡は、俺を抱きしめてきた



「本当…肝心なこと言わねえよな…
俺の妹は… そんなに我慢ばかりして…
ごめんな… 気づいてやれなくて
俺の妹なのに… ごめんな…」



平岡がこんなに弱っている姿は
兄というより、弟のようだった


ヨシヨシと、背中を撫でた



「1人で何でもしようとするな
俺がついてってやる」


「ホンマ!?心強いわ!おおきに!」



泣き顔の平岡と共に


慶喜と梅沢が待つ部屋に向かった







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