浅葱色の忍
食欲も無く

自分で体を動かすことも出来ず


このまま死ぬんだろうと思った






落ちた暗闇から
救ってくれたのは、平岡だった





毎日、俺を抱え陽にあててくれた


水を飲ませてくれた


「大丈夫!すぐ良くなる!」



まじないのように何度も聞いた


少し食べれるようになり

少し動けるようになり


体は、回復したけど



そんな自分に、またガッカリした




強い… 丈夫や…








慶喜たちが城へ行く日


俺は男装して屋敷を抜けた


喜代の墓参りをして


大きな木の下へ


そこに、松五郎が座っていた



「今日は、警護じゃないんだな?」


「そっちこそ…」




俺は、松五郎と向かい合うよう座ると
懐からクナイを出した



「介錯してくれないか」



「死にたいのか…」



「ああ 松五郎… 
お前なら、俺を救えるだろ?」


「俺は、ただの友だ
岸三!お前は、ただの人になればいい!
忍なんて、辞めてさ
旅にでろ!やりたいことをして生きろ!」


「旅?」


旅は、嫌と言うほどしたけど…



「そうだ!お前と似た名前の男もな
悩んだりすると、ふらっと旅に出ていた
まぁ、薬を売っていたんだが
お前は、まだ何も成していない!
そうだろ?旅をして、自分のしたいことを
みつけて好きに生きろ!」




考えたことなかった

忍になることだけが全てと思っていた




「松五郎…俺…」



「お前が生き方を見つけたら、文をくれ
元気にしていると
会いに行く!酒を飲もう!!」



「うん」






忍… 辞めよう


生きなくちゃ




いつか、あの世に行った時




先に逝った大切な人達に

誇れるように







見上げた空がやけに綺麗な青で









「なりたいな…」


「何?」


「あんな明るい色になりたい」


「なれるさ」




変なことを言ったのに
松五郎は、笑いもせず



「岸三が空なら、寂しくはないな
毎日、見上げるよ」


「頼もしいな
松五郎が見守ってくれるなら
何でもできそうだ」




闇が晴れた


本当に何でもできそうだから





< 256 / 264 >

この作品をシェア

pagetop