浅葱色の忍

近藤勇

烝は、話してくれた




「慶喜の隠密やけど、側室でもあったんや…
子を夭逝して、それから
なんや、ギクシャクしてん
せやから、離縁して隠密に戻って…
それでも、あかんかった
真っ暗で、何も無くなってしもて
隠密も辞めてん」





元夫婦





だが、慶喜様の腕に抱かれている烝を
見ていられなかった



持ち場に戻って、見まいと思っていたのに



チラリ




未だ慶喜様の腕にいて
顔を赤らめた烝






敵わぬ相手への嫉妬





今すぐにでも、奪い返したい




だが、この場に深雪もいる



あれは、嫉妬深い女だ





可哀想な生い立ちを聞き
身請けし、妹と一緒に暮らす家を与えると
約束した


歳からは、半端な気持ちで
人助けなんてするなと言われた


あの時は、半端な気持ちではなかったはず


だが、今は少し厄介に感じることもある


深雪が私に恋心を抱き
必用に私を追い求める


私は、それに答えるほど


実は… 深雪を愛してはいない





それなのに





「いつ、身請けしてくれますのや?」




迫られると、断れないでいる






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