浅葱色の忍
山崎が屯所を出て、置屋で烝華になった頃

今夜、新選組が宴をすると予約が入る

そのすぐ後に、幕府の用人が烝華を指名


「新選組はんは、お断りします」


山崎の客は、以前と同じ客で


「殿は、其方を気に入っておられた
側室にどうかな?」


突然のことに固まる


「可愛いややこを産んで貰いたい!」


「うちは、体が丈夫やあらしまへん
お子は……」


「そう言わず、今一度
わが殿と会って貰いたい!
そうだ!急ですまんが明日
二条城に来てくれ!
新選組に護衛させよう!」


「急どすなぁ…」



「明日 いいな?
では、わしはこれで」



男を見送った後



山崎は、呆然と立ち尽くした




元側室で、すでに慶喜の子を亡くしている


頭の中で、過去がぐるぐる回る



「烝華どないしたん?」



気がつくと目の前に君菊とその後ろに土方


ポロリ



涙が伝う




「おい!どうした!?なんかあったのか?」



涙を拭うと背を向けた


「何にもあらしまへん!すんまへん!」


「何にもなくて、泣くかいな?
言うておくんなはれ!」


「ちょっと……思い出しただけどす
グスッ それだけどす」



君菊が烝華を包み込む



「今夜は、仕事終わったんやろ?
泣いたらええ!しっかり泣き!」


苦しそうに声を抑えて泣く烝華に



「兄妹揃って、我慢しやがって…」



土方が呟いた









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