浅葱色の忍
山崎、吉村が屯所に戻った


挨拶もそこそこに
山崎は、体調崩している沖田のもとに行く



「寝込んでいるって聞いたけど…
元気そうですね」



部屋に入るなり、呆れた



沖田が、のん気に大福を食べていたからだ



「おかげさまで!
山崎君も食べない?」


「お茶煎れてきます」




再び、沖田の部屋に入ると

ニコニコと待っている姿に
吹き出してしまう


「ふふっあははっ大っきい子供みたい!」


「そう?僕が?」


「めっちゃ良い子に待ってた感じや!
ほれ、お茶!」


「ありがとうございます
帰って早々、ごめんね?」


「いや、こちらこそ
なんか、気が抜けた!おおきに」


「久しぶりだね!」


「そやな
しばらくあけてたからな」


「そうじゃなくて!その喋り方だよ!
そっちの方が、好きだよ!
山崎君らしくて心地良い!」


「そか?おおきに!
沖田さんは、ホンマに心を閉ざしてたん?
甘え上手な、人懐っこい感じやけど?」


「へへっ 挨拶すら出来ない子供でした
臍曲がりで… よく、邪魔にされましたよ
近藤さんだけは…近藤さん始め、皆だけは
なぜか、可愛がってくれて
嬉しかったですね!それから剣術が急に
楽しくなっちゃって!」



懐かしそうに語る姿に安心しつつも
細い体に目が行く



「診察してもええか?」


「はい」






胸の音に耳を澄ませていると

ぎゅっ


沖田に抱きしめられる



「山崎君、まだ何も言わないで下さい
もう少し… 皆といたいんです」



大人しく抱きしめられたまま



「そんな悪い音してないけど?」


「え?本当?」


沖田から離れて顔を覗き込む



「病は、気からやで!」


「あはっ!僕、てっきり悪くなってると
良かった!!
あ!お茶!冷めちゃったね…」


「クスッ 食べよか」




西本願寺に屯所を移してすぐ

江戸で知り合った松本医師に


〝労咳〟と、診断されて以来


度々、寝込んでいた




その度に、沖田が弱気になることを
山崎は、心配していた




「沖田さん 諦めたら負けやで
一緒に闘おな!
俺もひとりやと不安や
沖田さんが頼りなんやで?」


「僕…?」


「今、素で話せるの沖田さんしかおらん
ホンマ、救われてる
おおきに!」


「うん!山崎君!時々一緒にお茶しよ!」


「そやな」

















< 94 / 264 >

この作品をシェア

pagetop