イケメン兄の甘い毒にやられてます
何度目かのインターホンで目が覚めた夕陽は、目を擦りながら玄関のドアを開けた。

「…はーい、ぁ」
「…夕陽、ゴメン、寝てた?」

…夕陽が心配で、見に来たのは優。

只今の時刻、午後7時過ぎ。謝る必要はない時間なのだが、明らかに寝起きの夕陽に、優はつい、謝っていた。

「…ふふ、謝らなくて良いよ?居眠りしちゃってただけだから」

そう言って笑った夕陽はくしゃっと顔をほころばせた。

その笑顔が、優は大好きだ。

「…夕陽、今日、なんか変だったからちょっと心配になってさ、大丈夫か?」

「……ぅん、大丈夫だよ?わざわざ来てくれたの?なんか、ゴメンね?」

夕陽に対しては、いつも、過保護なくらい心配してしまう優。

それも、無理はない。

看護学校時代から、何かとそそっかしい夕陽。

転けたり、ケガしたり…人に対しても、自分のことよりまずは相手を尊重する。

夕陽は自分を圧し殺す癖がある。

だから優は、夕陽を過保護なくらい面倒を見てきた。

「…そっか、それならいいんだ。あ、これ、おみやげ」

そう言ってコンビニの袋を差し出した優。

その中には、夕陽の大好きなプリンが入っていた。

当然、夕陽は満面の笑みを見せた。

「…わぁ、ありがとう!私の大好きなプリンだ。でも、こんなに沢山一人じゃ食べきれないよ?」

「…うそつけ、夕陽の事だから、2、3日うちにはなくなってるだろ?」

ズバリ言われて、夕陽はへへっと笑う。


「…じゃあ、俺帰るわ」
「…え?一緒に食べないの?」

「…うん、今日はこれからちょっと用事があるから帰るわ」

「…そうなんだ、用事があるのに、わざわざゴメンね、ありがとう」

話終え、優は、ドアを閉め、歩き出す…と。

向こうから、知った顔が歩いてきた。

「…神藤先生」

そう、圭吾だった。
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