イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…夕陽、どうした?」

明らかに様子の違う夕陽が心配になった優は、声をかけた。

「…」

だが、その声かけに、応答がない。

「…夕陽、気分でも悪いのか?夕陽?」

優が夕陽の肩に手を置いた、その時だった。

その優の手を誰かが掴んだのだ。

優は驚いて顔をそちらにむける…と。

「…神藤先生?」

優の手を握っているのは圭吾だった。

圭吾の顔は確かに笑っている…それなのに怖さを感じた。

夕陽に触れるな。そう言っているかのような目付きだ。

「…夕陽と仲良しなんですね」
「…え?ぁ、え???」

夕陽を何の迷いもなく呼び捨てにした圭吾に、優は驚きを隠せない。

「…夕陽は、俺の妹です」
「…ぇ…へ?!え、そうなのか、夕陽?」

「…ぇ、あ、うん」

「…神藤先生、ちょっといいですか?」

3人の話に割って入ったのは看護師長。

圭吾は二人に笑みを浮かべると、看護師長の所に向かった。

「…夕陽、お兄さんがいたんだな」
「…う、うん…仕事しようか」

「…え、あ、あぁ」

なんだかギクシャクしている夕陽が気になったが、優は仕事を始めた。

…夕陽は、落ち着けずにいた。

…知らなかった。

…圭吾が帰国していたことに。

…知らなかった。

…大学病院で働くはずの圭吾が、大学病院付属の分院に来て、働くなんて。

自分と同じ病院にいるなんて。

驚き。

嬉しさ。

戸惑い。

恋しさ。

ありとあらゆる感情が夕陽の心の中で葛藤していた。

…。


「…お疲れ様でした」

何とか失敗をすることなく、夕陽は1日の業務を終え、アパートに帰宅した。

そして、大きなため息をつきながら、小さなソファーに腰を下ろした。

…疲れがどっとでたのか、夕陽はいつの間にか、ソファーで居眠りをしてしまった。

…。

「…けいご、さ、ん」

ピンポーン。

誰かが、夕陽のアパートのインターホンをならした。
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