イケメン兄の甘い毒にやられてます
優のことは、考えすぎだったんだと分かった夕陽は、晴れやかな気持ちで自宅へと帰った。

そんなとき、夕陽の携帯にメールが来たことを知らせる着信音。

メールの相手は圭吾で。

『もう少ししたら仕事が終わるよ。遅くても、8時位までにはそっちに行くから』

それを見た夕陽の顔は、ほころんだ。

只今の時刻、6時過ぎ。今から夕飯の支度をすれば、圭吾と一緒に食べられると思った夕陽は、台所にたつと、そそくさと、夕飯の支度を始めた。

…。

午後8時少し前。

インターホンが鳴ると、急いで玄関を開けた夕陽。

その目に映ったのは、圭吾で。

夕陽は満面の笑みを浮かべた。

「…お帰りなさい」
「…ただいま、夕陽…なんか、いい匂いがする」

そう言って鼻をくんくんする圭吾が可笑しくて、クスクスと笑いながら、言った。

「…ご飯、食べますか?」
「…うん、久しぶりだな、夕陽が作る料理」

「…ほんとですね、直ぐによそいますから。中に入って座って待っててください」

そう言うと踵を返して台所に向かった夕陽だったが、それは直ぐに止められた。

…圭吾が後ろから、夕陽を抱きしめたから。

「…圭吾さん?」
「…夕陽」

「…何ですか?」
「…夕陽」

「…どうしたんですか?」
「…夕陽」

何度も何度も夕陽のなを呼ぶ圭吾に、夕陽はふふっと笑う。

「…圭吾さん」
「…夕陽がこの腕の中にいるんだよね」

「…はい、ちゃんといますよ」
「…ずっとこのままこうしてたい」

「…ご飯食べられませんよ?」
「…夕陽が足りない…ずっとこのままじゃだめ?」

「…頑張って作ったんですよ?圭吾さんのために」

その言葉を聞いた圭吾は困ったような笑みを浮かべた。

「…夕陽には、敵わないな」
「…ふふ、そうですか?」

「…うん、お腹すいた。ご飯食べよう」

圭吾の言葉に、夕陽は頷いた。
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