black×cherry ☆番外編追加しました
車が走り出して数分。

馬場さんは、バックミラー越しに今日の予定の確認をする。

「ええと。昨日の話だと、大学の前に海に寄るんでしたよね?星の崎のハーバーでしたか」

「はい・・・。すみません」


(ごめんなさい、馬場さん・・・)


シートベルトを握り締め、心の中で謝罪した。

馬場さんにも・・・そしてママにも。





昨夜。私は、「急な朝練が入ったので、いつもより早く家に迎えに来てほしい」と、馬場さんに連絡をした。

そして、その朝練前に、海に寄ってほしいと頼んだ。


(『体力づくりのために、海でランニングをする』なんて、あまりにも無理のある嘘だったけど・・・)


馬場さんは何も疑うことはなく、「わかりました」と私の頼みを聞いてくれた。


(こんなこと・・・自分でも、馬鹿みたいだってわかってる・・・)


だけど。

どうしても、黒崎さんに会いたかった。

そして私は考えて、海に行けば会える気がした。

あの、釣り桟橋のある海に。


(いつもいるとは限らないけど。釣りが好きって言ってたし・・・)


警察署に行く以外、会える場所は釣り桟橋しか浮かばなかった。

ママは、「サークルの練習」と言えば出かけることを許してくれるし、帰りが遅くなるのはあまりいい顔をしないけど、朝練で早くなるのは何も文句がないようだった。


(それに、釣りといえば朝って感じがするものね・・・)


嘘をつくのは心苦しい。

だけど今日だけ・・・と、私は悪い子になるのを決めた。









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