black×cherry ☆番外編追加しました
「・・・っ」


キキ――—ッ!


(・・・!!!)


突然、急ブレーキがかけられた。

住宅街に入る手前の、少し広い路肩スペース。

シートベルトが食い込むような衝撃に、心臓が止まりそうになる。

「・・・それなら、早く僕を好きになりなよ」

呟く声に、私は運転席に目を向けた。

その横顔は、怒っているような、切なげな影を帯びていた。

「好きな人と結婚したいなら。僕を好きになればいい」

「・・・あ、あの・・・」

「僕は好きだよ。咲良ちゃんのこと」


(なんで・・・)


子どもの頃から、何度か会ったことはある。

パパからも、私のことをいろいろ聞いたと言っていた。

だけどそれだけ。ほとんど話したことはない。

なのにどうして、先生はそこまで私のことを好きだと言うの・・・?

「どうして、私を」

「・・・そうだな。初めは確かに、かわいいとしか思ってなかったよ。家柄も、魅力じゃないって言ったら嘘になる。けど、そういう頑固で一途なところとか、ホストにはまるところとか。

キミ自身は一見全て完璧なのに・・・アンバランスで、危うくて、ほっとけない」

早川先生が、シートベルトをガチャリと外す音がした。

その音にはっとなった瞬間に、先生の右手が私の左頬に触れた。
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