black×cherry ☆番外編追加しました
「僕は医者だし、家柄だってそれなりにキミに見合うと思う。あの人より、咲良ちゃんを幸せにする自信もあるよ」

「っ、あの」

「約束する。必ず、幸せにするから・・・」

甘く見つめる視線に捕らわれ、身体が熱く動けない。

頬にかかった指先が動き、先生は私の顎に手をかけた。


(・・・!)


「・・・咲良ちゃん」

先生の、吐息が近づく。

私は咄嗟に、目をつぶってぎゅっと顔をうつむけた。


(・・・っ)


「・・・」

そのまましばらく、先生の指先は固まったように動かなかった。

けれど少し間を置いて、ゆっくりと私の肌から離れていった。

「・・・初めてだな。女の子に、キスしようとして顔を背けられたのなんて」

目を開いて顔を上げると、早川先生は額を押さえてうなだれていた。

私の視線に気がつくと、自嘲するようにふっと笑った。

「無理じいをする気はないよ。嫌われるのもイヤだしね」

「ちょっと傷ついたけど」と言いながら、先生は、姿勢を直してハンドルに一度手をかけた。

なんとも言えない、複雑な気持ちがこみ上げる。

「・・・すみません・・・」

「・・・ああ、いや、ごめん。咲良ちゃんは悪くないけど」

「甘かったな」と言って、先生はまた少し笑った。

そして、気持ちを切り替えるように大きな息をひとつ吐く。

「けど・・・そういうところも僕は好きだよ」

「えっ・・・」

「そういうところが、全部僕に向くといい」

どこか、独り言のようだった。

そして、先生は助手席の私に横目で甘く微笑みかけた。








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