black×cherry ☆番外編追加しました
チケットは受け取ったが、コンサートに行く気はなかった。

成り行きというか、場を収めるために受け取ったようなもの。

それに。

好きだと言われてコンサートまで行ったりしたら、下手に気を持たせそうだし、そもそもあの時点では、本気かどうかも疑っていた。


(行って冗談だった場合には、オレ自身がいたたまれないしな・・・)


だけど、貴見のことであいつが泣いて・・・さすがに見ていられなかった。

ただでさえ傷ついてるのに。

コンサート前日に、手に怪我をして泣いていた。


『行けたら行く』
 

思わず口走ってた。

中途半端な約束だけど、それだけで羽鳥咲良は嬉しそうな顔をした。

もう、行かないわけにはいかなくなった。




コンサートに行ったからって、羽鳥咲良に会う気はなかった。

会ったところで感想なんて言えないし、他に話すこともない。

すぐに帰るつもりだったけど、出口で呼び止められたんだ。


『黒崎さん・・・っ!』


羽鳥咲良の声がして、思わず立ち止まっていた。

ーーーー驚いた。

ステージはもちろん見ていたが、間近で見ると、その姿は目を奪われるほどに綺麗だった。

それまでは、美人というより美少女で、だからまだ、子どもなんだと思ってた。

けれど、ドレスを纏い、普段より華やかに化粧をしていた今日の姿は、可愛らしさはそのままに、美しさも備わっていた。


(可愛くて、綺麗だったな)


そんなこと、死んでも口にしないけど。












< 206 / 318 >

この作品をシェア

pagetop