black×cherry ☆番外編追加しました
「できなかったって、止めなかったら意味がねえだろ。・・・ったく、伯父馬鹿もいいとこだ。仕事より姪の対応とか。意味わかんねえ」

「す、すみません・・・」


(どうしよう・・・怒らせてしまった・・・)


怖い。

いつかの取り調べ時の恐怖がどんどん甦る。

カタカタと身体を震わせていると、黒崎さんは、ため息をついて乱暴に引いた椅子にドカッと座った。

「・・・わかった。とにかく、ケーキ食って美術館行って、美味い夕飯食わせてやればいいんだろ。いい。全部やってやる・・・」

呟く様子は、完全にやけくそっぽい。

私はおずおず言葉をかけた。

「あの・・・無理しないでください・・・」


(本当に・・・)


「は?簡単に言うな。やらなかったら、オレは離島に飛ばされる」

「でも、おじさまも本気なわけでは・・・」

「あいつがそんな冗談言うか。あの人は本気で飛ばす。ムカつくけど、オレは離島勤務はしたくない」

はあ、と大きなため息をつく。

そして私をジロリと睨んだ。

「おまえだって嫌だろーが。オレと美術館とか夕飯食うとか」

問いかけられて、私は目を泳がせた。

嫌とは言えない。でも嫌だ。

嫌というかとにかく怖い。

声に出しては言えないけれど、確実に、気持ちは伝わってしまったようだった。

「・・・ったく、嫌なら嫌って言えばいいだろ。ほんと、面倒なお嬢様だな・・・」

何度目かのため息をつかれ、私はさらに震えてしまった。

黒崎さんのため息は、回数を重ねるたびに私を恐怖の淵へと追いやっていく。


(これから半日、この黒崎さんとずっと一緒にいるなんて・・・)


私は生きていられるだろうか。

考えると、頭の中は不安で埋め尽くされてしまった。
















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