black×cherry ☆番外編追加しました
予想外は続く
その後運ばれてきたフォンダンショコラは、ほぼ無言のうちに食べ終えた。

来る前は、楽しく話せるようにがんばろうなんて思っていたけど、今の私は、無言で平常心が精一杯だ。


(せっかくのフォンダンショコラも、怖くて緊張しながら食べたから・・・。ひとりだったら、もっとゆっくり食べられたのにな・・・)


とはいえ、おいしいものはおいしかった。

トロリと溶け出たチョコソースの味は絶品で、食べている間はやっぱり幸せ気分になった。

黒崎さんは甘いものは苦手なようで、ちょっと口をつけたくらい。

それでも顔をしかめていたので、本当に苦手なのだと思う。

「・・・」

「・・・」


(どうしよう。怖いけど、なにか話した方がいいのかな・・・)


二人だけの個室空間。

ケーキを食べ終えコーヒーも全て飲み干すと、なんとも手持無沙汰になってしまった。

無言がつらい。

さすがになにか話をしようか・・・と、考えていたときだった。

「いつもあんな感じなのか。本部長・・・というか、おまえの伯父さん」

沈黙の中、黒崎さんが口を開いた。

私はドキリと背筋を伸ばし、「はい」と言って言葉を続けた。

「すみません・・・。今日ほどではないですが、だいたいああいう感じです」

黒崎さん・・・他人に高圧的なおじさまを直に見たのは初めてだけど、基本的に私には、いつもと変わりがない感じ。

黒崎さんは「フーン」と頷く。

「あれじゃ周りが大変だな・・・。父親もあんな感じなのか」

「いえ・・・。父は、優しいですがあまり感情を表に出すタイプではないので・・・。おじさまとは、ちょっと違う感じです」
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