冬の恋、夏の愛

羽島さんからの連絡が、プッツリと途絶えて、一週間が過ぎだ。

『好き』

羽島さんは、そう言ってくれたはず。それなのに、オレは……。自分でチャンスをつぶしてしまったことに、酷く後悔をしていた。

『は?』

……なんて。オレもどうかしていた。どちらかといえば良い印象を持っていた女の子に対して、言う言葉じゃないな。

「寿彦、仕事終わったら飲みに行くぞ」

定時が近づいてきた頃、涼介がすれ違いざまにポンと肩を叩いて言った。そんな気分じゃないけれど、ひとり、家にいるよりはいくらかマシだ。

立ち止まり、涼介の背中に視線を送る。涼介みたいに人当たりがよくて、おまけにほんの少しだけ、カッコ良ければ……。女の子との付き合いも、もう少しうまくできるかもしれないのに。

……なんて。無い物ねだりをしても、仕方がない。オレには、野球がある。女の子との付き合いは、めんどうなだけ。そう自分に言い聞かせると、小さくため息をついて、また歩き出した。



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