冬の恋、夏の愛
莉乃ちゃんの会社がある流星区までは約一時間。会社までの距離が遠くなっても、オレとの同棲を選んでくれたことを、今さらながらありがたく思った。

飲み会をしている店は、駅から少し歩いた場所にあるようだ。もう飲み会が終わって、駅に向かう時間だろうから、途中で会えるかな……。そんなふうに思っていたオレの足がピタリと止まった。

「……莉乃ちゃん」

向き合う加茂さんと莉乃ちゃんの姿が、目の前にあった。会社の飲み会は嘘だったのか……。あまりのショックに、ポカンと口が開いた。

「おや? 関さん、こんなところでお会いするなんて」

動揺するオレに、余裕たっぷりの笑みを見せながら加茂さんが言った。

「寿彦さん! 違うねん! ふたりで飲みに行ったわけやないんやで! さっきまで会社の人たちと……」

まさか、オレが迎えに来るなんて思ってもいない莉乃ちゃんは、慌てて言い訳をした。

「言い訳は、聞きたくない」

莉乃ちゃんが、浮気をしていたなんて。ショックのあまり、人ごみの中を逃げるようにして走った。


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