冬の恋、夏の愛
とにかく、走った。莉乃ちゃんは、きっと追いかけてくる。今は、何も話したくない。追いつかれないように、駅に向かわず、途中のコンビニに逃げこんだ。

ビールを二本とおつまみを買い込むと、コンビニを出て、駅に向かった。

一度の誘いならともかく、二度も……。もし、オレが迎えに来なかったなら、飲んだ勢いで……ということも考えられた。

加茂さんは、誘いにのったことをわざわざ電話してきたけれど、もしかしたらふたりで会うのは、一度や二度じゃなかったのかもしれない。

……と、いうことは、ふたりは、もう。

そんなふうには考えたくない。賑やかな夜の街をひとり、うつむきながら歩いた。

また、一時間かけて地元へと向かう。途中、涼介に電話をして、泊めてほしいとお願いをした。

『別に構わないけれど。莉乃ちゃんとけんかでもした?』

けんかは、していない。けんかにもならない。「いろいろあって……」とだけ答えると、涼介は察してくれたのか、それ以上は、何も聞かなかった。

家に着くと、急いで身支度を始めた。次にこの家に帰るのは、別れ話をするとき……か。はぁ、とため息をつくと、鍵を閉めた。


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