婚約指環は手錠の代わり!?
「高見さん、人のこと気にする余裕があるの?
さっきまた、海瀬課長から書類戻されてたみたいだけど」

私が振り返るより先に、武本さんから冷たい声が飛ぶ。

「あ、いえ。
なんでもないです……」

すごすごと去っていった高見さんに感謝しつつ、心の中で小さくため息。

ここ二、三日で少しわかった気がするのだ、誰も私を助けてくれない理由。
武本さんと関わるとろくなことにならない。
初日の哀れむ視線も、私の教育係が武本さんだからだ、きっと。
みんな、こうなることを予想していたに違いない。

 
気づけばお昼休みになっていた。
武本さんは速攻で出ていったし、課内に残ってる人は少ない。

「芹口君」

顔を上げると、海瀬課長が私が詰まってる書類をぱらぱらとめくってた。

「問題は解決できそうか?」

にやり、海瀬課長の右頬が意地悪く上がる。
もうそれだけでかっとあたまが熱くなった。

「大丈夫です」
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