婚約指環は手錠の代わり!?
そっと親指を引いて唇を開かせると、また唇を重ねてきた。
今度は唇にできた隙間から、滑ったそれが差し込まれる。
拒否しようと思いっきり胸を押したけど、びくともしない。
さらには空いていた手で逃げられないように後ろあたまを押さえられた。
絶対に受け入れない、そう思っているのに海瀬課長に翻弄されて身体の力が抜けていく。
自然に瞼が落ちて、崩れ落ちそうになって慌ててスーツの襟を掴んだ。
顎に掛かっていた手はいつの間にか、私の身体を支えてる。

「……はぁ」

唇が離れると、自分でも信じれないくらい熱を帯びた吐息が落ちた。
支えられてようやく立っている状態。
後ろあたまから離れた手が頬にふれ、そっと親指が唇をなぞる。

「続きはどうする?」

右頬だけをゆがめて不敵に笑う海瀬課長に、私は。









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