婚約指環は手錠の代わり!?
仕事中は贔屓されたりとかもないし、いままで通り。

……嘘です。
武本さんの睨みが。

「芹口さん。
資料入力、お願い。
今日中ね」

「……はい」

鈍器になりそうな厚みのファイルを突きつけると、武本さんは歪んだ笑みを浮かべた。
仕方なくぱちぱちとキーを打っていると、背後に人の気配。

「この資料をひとりで?」

後ろから手が伸びてきてファイルを掴むと、ぱらぱらとめくってる。
しかも、声が冷気を孕んでて、ひんやりとその場が冷えた。

「効率的じゃないな。
手分けしてやった方がいい。
小林君、上村君、できるか?」

「はい」

「はい」

ファイルをばらすと、立ち上がった小林さんと上村さんにその人――海瀬課長は手渡した。
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