冷たい雨の降る夜だから
落ちてくる空
 もう寝ようとベッドに転がったものの、なかなか寝付けずにいると、立て続けにスマホがラインメッセージの受信音を奏でた。普段ならこんな時間に鳴ることが無いのに。訝しみながら手を伸ばしたスマホのロック画面に表示されているメッセージに驚いて、ベッドの上に跳ね起きた。

『北川、今度飯食いに行こう。前の事、別に俺は怒ってないし』

 送ってきたユーザー名は『YU-TA』登録もしていないし、初めてメッセージを受信した相手ではあるが、知らない人ではない。菊池君、だ。同期のグループラインから私に直接メッセージを送ってきたのだとすぐに察しがついた。

 だえど、菊池君に限らず男の人と二人でご飯を食べるなんて私には到底無理な話だ。

 どうしよう。なんて返事をしよう。

 何も悩む必要もなく、『二人で会うつもりはない』それがただ一つの答えなのは判っている。問題は、どんな言葉でそれを伝えるか。どんな言葉で伝えたら、菊池君の機嫌を損ねずに済むのか、それが判らなかった。

『無理なら無理ってさっさと言えって何度も言ったろ』

 そんなの判ってる。判ってるよ、先生。

 記憶の彼方から、今でもクリアに聞こえてくる先生の呆れ声に、唇を噛んで俯いた。判っているのと、実行できるかどうかは違うのだ。

 私、全然成長できていない。そんなことを今更のように実感していた。
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