過保護な副社長はナイショの恋人
仕事のときとは別人のように、甘い顔を見せる副社長に戸惑いを感じながらも、ときめく自分がいる。

夢中になりながらキスを交わしていると、ドアがノックされる音が聞こえた。

「副社長、誰か来たみたいです」

我に返り体を離すと、副社長は不満そうな顔をしている。

「副社長じゃないだろ? なんて呼ぶんだ?」

私を抱き寄せて、顔を近づけた。

「えっ? 今は、そんなこと言ってる場合じゃないですよ。誰か来たのに……」

と、焦る私とは対象的に、副社長はいたって冷静だ。

「店員だよ。ちゃんと言わないと、このまま入ってきてもらうけど」

「わ、分かりました! 一翔さん……。離れてください」

恥ずかしさを隠しながら言うと、副社長はようやく離れてくれた。

そして私に額と額をくっつけると、満足そうに言った。

「よくできました」

最初から、こんなに振り回されていいのかな……。

そんなことを考えながら、チラッと副社長を見る。この部屋は夜景が見下ろせてロマンチックなのに、私は隣にいる副社長が気になって仕方がない。

私が、自分の会社の副社長と付き合うことになるなんて。

松谷一翔さん、彼が私の恋人になるなんて……。
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