冷酷な公爵は無垢な令嬢を愛おしむ
「いえ……レイと結婚するつもりで婚約したわ」

 けれど正直言えば跡継ぎ問題の事などは深く考えていなかったのだ。レイ自身が私のとの子供など望んでいないだろうと思っていた。

 妻に束縛されたくないと言うくらいだ。

 既に外に女性がいるか、居なくても作る気でいるのだろうと、形ばかりの妻になる私になんて興味が無いのかと思っていた。

 実際のレイの考えは全く違っていたようだけれど。

「結婚式は半年後だ。その夜にローナを抱く」

 あまりに直接的な言葉に私は真っ赤になって目を見開いた。

 レイがくすっと笑いながら当たり前のように手を伸ばし、まだ熱を持った唇に触れて来る。

「だからキスくらいで動揺していたら身が持たないぞ。これでもいろいろと耐えているんだ。初夜は俺が満足するまで離さないから覚悟しておいたほうがいい」

 壮絶な男の色気を振りまきながらレイが言う。

 刺激が強過ぎて上手く声が出ない私を、レイが再び抱き締める。

「あまり時間が無いな、そろそろルウェリン男爵邸に着いてしまう」
「レイ、待って私……」
「覚悟しろって言っただろ?」

 出来る訳がない!

 そんな叫びはレイの唇で塞がれる。
 それから馬車がルウェリン邸に着くまで、私が意味のある言葉を発する事はなかった。
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