【短編】泣き顔記念日
「それから、廊下で目が合ったりしたら笑いかけてくれて…いいなこの人って思ったの」
彼女の話を聞きたくないから、意識を彼女の毛先に向けたり、ゲームの設定画面のテレビに目を向けたりするけど
意識すればするほど、よく聞こえるようになって。
胸が痛い。
心から彼女はあいつのことが好きなんだ。
僕の力ではどうにもならない。
「そっか、頑張れよ」
どうにもならない気持ちだから、
僕ができることはただ1つ、彼女の幸せを願うことで。
「うん。ありがとうっ」
僕の精一杯の強がりに
君はそう笑いかけた。