【短編】泣き顔記念日
わざわざ新発売のゲームソフトをゲットしたのだって、君のためで。
「前に、私が寝坊して弁当作れなくて購買行ったの覚えてる?」
突然、テレビ画面の前で、ゲーム機を操作しながら話し出した七瀬。
「うん。すごい寝癖つけて部屋から出てきた時」
「うん。その日なんだよね」
「……」
「初めて豊田くんと話したの」
「…そう」
やっぱり聴きたくないかも。
彼女の唯一の幼なじみの僕は、聞かなきゃいけないんじゃないかとも思って、僕は黙ったままベッドに座った。
「購買のおばさんにお金渡すときに初めて財布の中見てさ、それで、ほんとすっからかんだったの…」
「うん」
「それですごいパニクってた時、後ろから声かけてくれて、豊田くんが。それで、お金払ってくれたんだ」
「そーなんだ」
『るいには言わない』
さっきはそんなこと言ってたのに、不意打ちで彼の話をしてくるなんて、罪なやつだ。