COUNT UP【完】
“好き”ってこと

「なぁユイ、“好き”ってなに?」

ある休日、季節は春目前。
空気が少しずつ暖かくなってきたからと今日はバイクに乗るのかと思ったら「電車移動」と言い出したミノルと駅に向かう途中で尋ねられた。

「んー、ポンちゃん」
「俺の意図とお前の答えが噛み合ってないんだよ。なんだよ、ポンちゃんて」

聞かれたから正直にあたしの感覚で答えたのに、この言われよう。
本当、朝からひどい。

「だってあたしの“好き”はポンちゃんを思う気持ちそのままだもん」
「いい加減ユウホ離れしろよ、バカ」

バカってひどいよ!と睨むと無表情で返される。
買い物に付き合えって言われたからわざわざ休日まで一緒にいるわけだけど、話していたらムカついてくるし疲れるし、なんで了承したのか自分がわからないし、一緒にいるのが嫌になってくる。

「で、“好き”ってなに?」

しつこい時のミノルは答えるまで解放してくれないから諦めて真面目に考えるフリをする。
それにしても“好きってなに?”と漠然と質問されても色々答えがありすぎてどう答えていいのかわからない。

「じゃあ、ミノルの“好き”ってなんなの」

わからないから逆に聞いてみた。
答えるにはやっぱり最初に例は必要だし。

「俺の“好き”?なるほどね」

何を思ったのか笑うミノル。
普通に聞いただけなのに変な人。

「俺の“好き”は“今”かな」

“今”?今ってナウ?とハテナが飛ぶ。
ミノルはあたしを見て口端をあげ、「ほら、答えたぞ。お前も答えろ」と言う。
全然参考にならない答えであたしは自分で捻り出すしかない。

あたしなりの答えはすぐに出しているのにどうしても思考回路の違いで質問の意図がいつも通じあえない。
こんなに合わないのにどうしてこんなに長い時間一緒に過ごしているのかあたしにはさっぱりわからない。

「えー?んー、好き…好き…好き…」
「なんなの?俺に間接的に告白でもしてくれてんの?」
「んなわけないでしょ?!」

冗談言ってからかうなら考えてやるか!とお腹をグーパンチしてやる。
あたしの精一杯の力でパンチする。

「痛いー」
「痛いようには聞こえない!」

お腹を押さえて痛そうな顔で笑うミノルに必死なあたし。
しまいには手を掴まれて、そのまま手を繋がされる。

なんなの?!
何が面白いの?!
あたしは全力で問うけど、笑うミノルを見上げながら思うことが最近ある。
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