COUNT UP【完】
Truth


「あんたさー、ミノルくんと付き合ってんの?」

来た、この質問。
いつかは来るんじゃないかと思ってた。

「付き合ってないです」
「付き合ってないの?!毎朝一緒に来てるのに?」

そうだよね、と言うしかない。
お昼ご飯のプチロールパンを口に運びながら「なんだかじれったい関係ね」の呟きに視線が下がる。

あたしとミノルは付き合ってない。
今も継続的に毎日起こしに来てくれて一緒に大学に行く。
最近は寒くなって来たけど、まだバイクに乗ってるし、あたしはそれを当然のように服を合わせていくし、めっきりスカートは減ってしまった。

「ミノルくんって人気なのよ?あんたはそんなんじゃないって言うけど、その気がある女子はいっぱいいるのに」

いるからなんなの?と思うから何も返事をせずにいた。

あたしだってこの関係には疑問を感じてる。
ミノルの相変わらずな態度のせいもある。

ミノルはあのバイクにあたし以外の女の子を乗せたことがないって言うし、あたしなんか普通は乗せたりしないって言うし、あたしにキスするキス魔だけど“好き”って言われたわけじゃないし、“付き合おう”って交わしたこともない。

ただポンちゃんとミノルが入れ代わっただけの毎日。
あたし達の関係が変わることは今はない。

ミノルがあたしを嫌いならこんなこと続けるはずないから嫌われてないのはわかる。

あたしみたいな女は普通乗せないって言われたから、多少は女として見られてるんだなとは思う。
それが友達としてなのか恋愛対象としてなのかはミノルに聞かなきゃわからない。

今の関係が変わることについて、少し考えた。
変わるというのは今の状態が“友達”だとするなら、“恋人”に昇格するか“顔見知り”に戻るかのどちらかしかない。

“恋人”なんて選択肢、以前のあたしなら絶対なかったのに今は少し考えてしまう。

「ユイ、携帯鳴ってるよ」

テーブルに置いてた携帯がバイブしていて、画面には“ポンちゃん”の文字。
久しぶりのポンちゃんからで「もしもし?!」と勢いよく出た。

《今、大丈夫?》
「うん」
《今日ヒマ?》
「ひま!ポンちゃんの為なら空ける!」
《いや、予定あるなら別にいい》
「予定ないの、本当に」
《んじゃ飯行こう。迎えに行くから家で待ってて》
「はーい」

久しぶりにポンちゃんとご飯が行ける!
そう思うだけで次の講義なんて苦じゃなくなる。

一気に笑顔になるあたしに「ポンちゃんとはどうなの」と言われた。
もう何度となく聞かれた質問。

「ポンちゃんは幼なじみなの。ちっちゃい頃から大好きで、互いに結婚しても一緒にいたいの」

そう言うと、「それって恋愛感情じゃないの?」と不思議そうに聞いてくるから、話すと長くなるしポンちゃんとあたしの関係を他の人に話すと大抵は“それってユイがどれだけポンちゃんが好きかの話でしょ?”て言われるから「違う」とだけ言っておいた。

「ポンちゃんとミノルくんの違いってなんなのかしらね」

そう呟く友達を無視してパンを食べきった。
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