東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
反対側の車線に電車がきた時、こちらの車線にも電車がくると言うアナウンスが聞こえた。

私は両親に今から帰ることを伝えるため、カバンからスマートフォンを取り出した。

「ああ、きてないな…」

スマートフォンには誰からの着信もなかった。

――今度副社長に会う時があったら、ちゃんと聞きなさい

頭の中にナオの言葉が浮かんだ。

会うも何も、どうやって会えばいいのよ。

そう思いながら両親に今から帰ると言う連絡を済ませた。

副社長とはこの間の水族館デート以来、1度も会っていない。

自分から連絡して副社長と会う機会を作ろうかと考えたこともあったけど、何だかそれはダメなことのような気がした。

副社長は仕事で忙しくて会えないから仕方がないと、自分に言い聞かせて心を落ち着かせた。
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