東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
もう何なんですか、この人は…。

社長じゃなくてタヌキおやじの間違いなんじゃないですか?

こう言っちゃ失礼ですけど、息子さんが亡くなったと言う奥さんに似てくれて本当によかったと思います。

「あの、1枚だけ写真を撮らせてもよろしいですか?

息子に送りたいので」

「えっ…」

何でですかと言いそうになったけれど、1回だけ会う訳ですものね。

顔がわからなければ困りますものね。

「メールで息子に送ったら、写真はすぐに削除します。

本当に息子に送るだけなので」

「あ、はい…」

私が首を縦に振ってうなずいたことを確認すると、
「じゃあ、撮りますね。

できるだけ楽にしていいから」

社長がスマートフォンのレンズを私に向けてきた。

パシャッと、社長室にシャッター音が響いた。
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