きみは宇宙でいちばんかわいい
下駄箱で柊くんと別れたとたん、周りの喧騒が、いきなりダイレクトに耳へ飛び込んでくる感覚がした。
まだ新学期が始まったばかりだというのに、校舎の内外は、あちこちで賑わいを見せている。
わたしはその輪のどこにも属していないのだなあ、と実感したら、突然いたたまれない気持ちになってしまった。
2年生の教室は3階に位置している。
なぜか上履きが鉛のように重たくて、階段をひとつ上るのですら、なかなかの苦痛だ。
自分のクラスへ向かう途中、去年いっしょに行動していた友達に会ったので挨拶を交わしたけれど、彼女の傍らにはもう新たな“仲良し”がいて、その子にどんな対応をするのが正解なのか、人見知りのわたしには、そんなことさえすごく難しかった。
――すう、はあ、
教室の茶色いタイルへ一歩を踏みだす手前、誰にもバレないよう、小さく深呼吸をする。
そして、がばりと顔を上げ、よし、なんてわざわざ意気込んだというのに。
そんな儚い意気など、すぐに粉々に砕け散ってしまったのだった。
「わ……わたしの席、が……」
見事に占領されてしまっている。
その要因は、他でもない、すぐ後ろの席に久遠くんが座っているから、らしかった。
男女問わず、多くのクラスメートが彼の席を取り囲み、楽しそうに談笑している。
それは、たとえ自分の席があそこに位置していなくとも、教室に入った瞬間いちばんに視界に飛びこんできていただろうな、と思うくらい、眩しい光景だった。