きみは宇宙でいちばんかわいい


「きなこちゃん、どこまで残酷なんだよ」

「え……」

「あいつのことが好きなくせに、なんで、俺の前で、そんな顔すんの?」


すぐ目の前にある、吸いこまれそうに美しい顔は、なぜか、とても、傷ついたような表情をしている。

それを眺めながら、わたしはいったいどんな顔をしているのだろう、とぼんやり思った。


「なあ、きなこちゃん」


そっと、頬を撫でられる。

繋がった指先ごと、体を引き寄せられる。


薄茶色に濡れた瞳に、自分が映りこんでいるのが見えた。

その表情は、とても、ノーを示しているようには思えなくて、そのことを認識した瞬間、大きなショックを受け、混乱した。


「なんで、嫌がんないの」


ふたり分のくちびるが、やわらかく重なっていく。

それは、とても丁寧で、なにより優しくて、どこまでもあたたかくて、それでいて、切なすぎて死んでしまうかと思うような、キスだった。

こんなの、もう、なかったことになんか、できるわけない。



「―――……きなこちゃんは、残酷だよ」



音もなく、かすかな距離の生まれた、くちびるの隙間。

彩芭くんは、わたしのすべてを責めたてるように、震えた声で、そう呟いた。




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