きみは宇宙でいちばんかわいい
この振動が、内臓を伝い、体内をめぐるほど、頭がぐちゃぐちゃにかき乱されるのは、どうして?
「…………っ、」
彩芭くんは、朝香ちゃんの、好きな人。
そして、彩芭くんは、柊くんの好きな人でもある。
朝香ちゃんは、わたしにとってかけがえのない友達だし、柊くんは、ずっと昔から、わたしが片想いをしている男の子だ。
それなのに、なぜ、わたしは、彩芭くんと手を繋いでいるのだろう。
なぜ、ずっと離したくない、なんて、あさましいことを思ってしまっているのだろう。
「彩芭くんって、朝香ちゃんのこと、どう思う……?」
「……なんで、きなこちゃんが、そんなこと聞いてくんの?」
彩芭くんは、なにも知らない。
朝香ちゃんも、柊くんも。
誰も、なにも知らなくて、きっと、わたしだけが、すべてを知っている。
「……じゃあ、柊くんのことは……?」
だから、わたしが、なんとかしないといけないのに。
誰も傷つかないように、なんとか上手に立ち回って、頑張らないといけないのに。
「なんで、あいつの名前が、いま出てくるんだよ」
「だって……」
「そんなに織部柊がいい? 体育祭のときだって、俺の手……」
そう言いながら、強く指を絡めとられて、はっとした。
あのとき思わず手をふり払ってしまったことを、彩芭くんは、ずっと忘れていなかったのだ。