きみは宇宙でいちばんかわいい
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一睡もできなかった。


メイクのノリは肌の調子で決まるんだから、前日の夜は何が何でも寝ろよ、と。

そう念を押してきたのは、彩芭くんのほうだったというのに。


ひょっとすると緊張で眠れないかもしれないなぁ、とは、ずっと前から、ちょっと心配に思っていたのだ。

でも、こんな、ぜんぜん別の理由でそうなってしまうとは、想像すらしていなかった。


まさか、文化祭本番を翌日に控えた夜、しっかり睡眠時間を取るようクギを刺してきた当の本人が原因で、不安材料だったことが見事に現実になるなんて……。


「……はあ……」


身体的にも、精神的にも、かなり良くないコンディションで学校に向かいながら、ほとんど無意識に、何万回目かのため息をついてしまう。


「マジで、大丈夫?」


それを、文化祭仕様の陽気な飾りつけがしてある校門をくぐりぬけたとき、隣を歩いていた柊くんが、優しく拾いあげてくれたのだった。


「あっ……うん! 大丈夫、ごめんね、何回も……」

「いや、大丈夫つっても、今朝からずっと半端なく顔色悪いよ。体育祭のときのこともあるし、無理すんのだけは絶対ナシだからな」


社交辞令や、常套句としてでなく、こういう言葉を本気で投げかけてくれるのだから、柊くんは本当にひどい人だ。

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