きみは宇宙でいちばんかわいい
ロンドン西部に位置するヒースロー空港は、イギリス国内だけでなく、世界的に見ても、最大規模を誇る空港らしい。
事前にけっこう調べて、それなりに覚悟はしていたけど、実際に降り立ってみると、想像など遥かに凌駕していたので、ひっくり返りそうになった。
出国時に使った地元の空港なんて、比べものにならない。
ここは、凝縮された、小さな地球だ。
かろうじて入国ゲートを通りぬけ、なんとかスーツケースを受け取ったのはいいものの、書いてある文字も、飛び交っている音も、すべてが英語で、めまいがしてしまう。
なにもかも、ちんぷんかんぷんだ。
こんなことになるなら、もっと、ちゃんと、英語の勉強を頑張ってこればよかったと、心の底から後悔する。
「𝐻𝑒𝑦, 𝑔𝑖𝑟𝑙.」
空港のド真ん中で途方に暮れ、半泣きになっていると、いきなり後ろから肩を叩かれた。
もしかして……と思う。
それなのに、ふり向いた先に立っていたのは、まったく知らない人。
彩芭くんかもしれない、
なんて、少しの期待を抱いてしまったせいで、その絶望感は、計り知れなかった。