きみは宇宙でいちばんかわいい


「……なあ、きなこちゃん。ちょっと、前、見てみて」


やがて、涙もすっかり晴れたあと、彩芭くんが何かに気づいたように声を出した。

言われるがまま、視線を持ち上げる。


「っ……うわぁ、すごい。すごく、すごく綺麗……」


目の前に架かっていたのは、夕方の空に淡く浮かんでいるような、大きな虹。

沈んでゆく太陽の光と反射しあいながら、水面を七色にきらきらと輝かせている。


それは、もう、どんな言葉を使ってでも表現できないほどの、絶景だった。



「これが、ロンドンで見る“なないろ”だよ」



最悪の日に、どんなに落ちこんだとしても、
最高の日は、あとから必ずやってくる。


冷たい涙の雨に濡れても、
その分だけ、美しい虹を架けることができる。


こんなふうにわたしたちは、
“人生最高”を、ずっと更新しつづけていくのだと思う。



きっと、これからも。

ふたりなら、何度でも。







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