きみは宇宙でいちばんかわいい
「𝑁𝑖𝑐𝑒 𝑡𝑜 𝑚𝑒𝑒𝑡 𝑦𝑜𝑢, 𝑁𝑎𝑛𝑎𝑘𝑜.」
そして、久遠くんは、とても流暢な英語でそう言った。
急に名前で呼ぶなんて、ずるい。
金髪の人って、ずるい。
「……あの、はい。よろしくお願いします」
「ええ? ナイス・トゥ・ミーチュー・トゥーじゃないのかよ、そこは」
絶対、ばかにしている。
それに、ネイティブの人の前で、カタコトの英語を披露するなんて、そんなに最低なことはないでしょう。
「わたしは、日本生まれ、日本育ちの、生粋の日本人ですので」
あまりにもずっと久遠くんのペースだから、いじけて右手をふりほどく。
そのあとは、もう黙々と、お弁当を食べることにした。
ついでに、今しがた貰ったばかりのコーヒー牛乳も飲んでみた。
でも、ごはんとの相性が最悪で、ぜんぜん美味しくなくて、思わずしかめっ面をしてしまう。
その様子を、久遠くんはずっと笑いながら、たまに意地悪なことを言って、面白そうに見ていた。
春の柔らかな光をまるごと吸いとり、さらさらと、気まぐれに揺れているはちみつ色の髪が、やっぱりすごく、綺麗だった。