170回、好きだと言ったら。



俺は椅子に腰掛けると、佐久間に手渡された紙切れに視線を落とした。

確かにここ最近では喧嘩で揉めたりしていねぇし、姿すら目撃されてない。

どういうつもりなのかは知ったこっちゃねえが…、佐久間の言ったとおり、沖宮を俺達の族から引き抜いたのは事実だった。


沖宮、というのは俺の幼馴染である実衣の実兄であり、悪鬼実野族 元2代目頭を務めていた男だ。


まさか事故で死ぬとは思ってなかったが、俺はアイツの死もあってこの悪鬼実野族の頭になろうと決意したようなもの。


今更逃げ道なんてどこにも用意されてねぇ。



「何で向こうは沖宮を欲しがったんや?
確かにアイツは強かったし、俺達の族でも上位に入る。
やけど…強いヤツが欲しいんなら、照道を引き抜くやろ?」

「…そうだな」

「疑問しか残らんなあ、アイツが生きとったら何か分かったんやろうか」

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