そのくちづけ、その運命
そこは、古びたバスの停留所だった。

田舎が舞台のドラマとか映画でよく見る、かろうじて屋根と長椅子があるだけの、そんな場所。


「よかった、誰もいない」


言いながら、彼はどさっとそのベンチに足を投げだす。

「あー結構疲れたね!」と言いながら。

「みこっちゃんこっち」


言われるがまま、真人くんの隣に腰を下ろす。


「あ、ギリセーフ」

何のことか思い空を見上げると、ポツポツと大粒の雨が降り始めた。


ぼんやりと見つめていた目の前の道路のアスファルトが、雨に打ち付けられ、みるみるうちに色を変える。


「雨降るの久しぶり、だよね」
私は何とか無言の時間を埋めるためにそう言葉を紡いだ。
だよね、の部分が微妙にかすれてしまう。

やっぱり敬語は慣れない。
そもそも年上だし…

しかし真人くんは気にも留めないように「だね」と微笑んだ。

……恥ずかしい。

そんな何の曇りもない笑顔を向けられると反応に困ってしまう。

なんて温かい人なんだろう。





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